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理事長あいさつ
2025年 年頭の所感
公益社団法人京都保健会
理事長 吉中丈志
明けましておめでとうございます。
 新型コロナ感染症後の世界は新たな様相を呈しています。戦争と貧困が拡大し、世界が分断と闘争の渦に巻き込まれつつあるかのようです。日本ではアベノミクスの失敗により、大軍拡・貧困と格差拡大が深刻になりました。労働分配率(生み出される価値のうち賃金や福利厚生費などで労働者に分配される割合)の低下と大企業内部留保の増加が国会で与野党ともに問題視する状況です。
 失業、非正規、低年金、性差別によって、単身者のなかでも若年層と高齢層に貧困が際立っています。貧困は若年層と高齢者層、とりわけ女性に顕著になっています。もっとも深刻なのは、母親が一人で子どもを養う、専業主婦だった女性が夫を亡くし遺族年金しかない場合などです。格差を表すジニ係数は最悪を示しています。社会保障などのセーフティネットが薄くなり、自助、共助ばかりが強調され、分断、亀裂、孤独が貧困にのしかかっています。
 2024年度はこれまでとは打って変わって医療機関の経営も厳しいものになりました。少子高齢化の進行、受診控えや医療ニーズの変化に加えて、医療費削減政策により患者になれない病人が増えているのです。外来や入院患者数の減少が目立っており、京都保健会も例外ではありません。
 ところが厚生労働省は、2040年をめざす新たな地域医療構想を策定し、一層強力な医療提供体制の縮減再編を進める方針です。医療機関機能を定め、「医育及び広域診療機能」「高齢者救急機能」「在宅医療連携機能」「急性期拠点機能」「専門等機能」の5つの類型に病院を集約再編する方針です。かかりつけ医構想による開業規制や「特定過剰サービス」に対する報酬減算に踏み込んで外来医療も縮小再編します。
 京都保健会はかってない経営困難に直面しています。「医療並びに公衆衛生の発達普及をはかり、労働疾病、保健衛生等社会医学の研究を行い、国民の健康を守ると共に社会人として生活できるよう援助し、社会福祉の増進に寄与する」(京都保健会定款)ことをめざす保健会の事業に支障が出かねない状況が現局面だと判断しています。
 新たな方針を定めてこれを打開しなければなりません。貧困など社会で困難にある人たちに寄り添うことが基本です。現状の延長線上ではなく経営が成り立つ構造転換が求められています。
 全職員、共同組織の経営が私たちの強みです。ICTを活用して強みを発揮し、連携を思い切って広げ、地域の医療、介護、福祉の質を向上させ、高齢者医療や介護など潜在する広くて深いニーズに対応できるよう自己変革を遂げていこうではありませんか。
2025年1月1日