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理事長あいさつ
2023年 年頭の所感
公益社団法人京都保健会
理事長 吉中丈志
 明けましておめでとうございます。
新型コロナ感染症との闘いは3年が経ちました。現在、第8波の最中にあります。健康に気をつけながら、今年一年新しい気持ちで進んでいきたいと思います。どうかよろしくお願いします。
 京都保健会は「地域における医療、介護・福祉、保健予防サービスを提供し、社会医学的研究を行い、国民の健康で文化的な生活の増進に寄与する」という理念のもとに、民医連綱領をかかげてコロナ禍に向き合ってきました。共同組織のみなさんと力を合わせ、地区医師会、地域住民のみなさん、大学、行政、諸団体などとの協同を進め、相互の信頼を高めることができました。一緒に闘ったすべてのみなさんにあらためて敬意を表したいと思います。
 昨年は新中期計画1年目の年でした。医療、経営、運動、人づくりの面で前進することができたと思います。右京医師会の寺村会長は「中央病院と協力して新型コロナ感染に取り組めて医師やスタッフのみなさんと今後につながる関係を作ることができた」述べられています。地域では食材プロジェクトなどに取り組んできました。経営では純資産(自己資本)が5.4%に回復し、今年度末までに12.7億円の借入金を前倒し返済する計画です。今後の投資資金確保の道筋をつける成果です。教育事業は県連とも協力して着実に進んでいます。京都大学社会健康医学系との共同は5年目に入り、無料低額診療やHPHでの共同研究が進んでいます。
 コロナ禍において、中央病院のリニューアルを始めとする総合移転計画が大きな力を発揮し、京都保健会は新たなステージに立つことができました。これまで保健会を支えていただいた職員や共同組織など先人諸氏のご尽力を保健会の歴史にしっかりと刻んでおきたいと思います。
 私たちは社会経済活動を取り戻してニューノーマルへ向けた模索を始めています。ところが岸田政権は大軍拡政策を発動することを宣言し国民生活に背を向けようとしています。ウクライナ戦争や東アジアでの覇権主義に対しては、日本独自の全面的な外交努力こそが必要であり人間の安全保障を進める道筋です。43兆円もの防衛費拡大、敵基地攻撃能力の保有など、戦後の安全保障政策の大転換は日本国憲法九条を大きく逸脱する軍事大国化です。国会や国民議論を軽んじ社会保障など国民生活を犠牲にするものとして看過できません。
 政府系の未来工学研究所の「技術革新がもたらす安全保障環境の変容と我が国の対応」(2020年)はアメリカなど各国の軍事研究を調査して次のように述べています。「DNA 操作や化学物質によって兵士の肉体的能力や認知能力などを拡張し、筋力や持久力を通常の人間よりもはるかに高めたり、夜間でも目が見えるなどの能力を付与することができるようになる。合成生物学によってより感染性や毒性の強い生物兵器や、敵の兵器やそれらを動かす燃料を分解してしまう新カテゴリーの生物兵器が出現する一方で、新たな化学物質やナノマシンが兵士の抗体を強化することも可能となる」、「今後、脳を損傷した兵士に対して、ニューロテクノロジー等を利用した、命令通りに反応するサイボーグ化手術を行うことが可能になることも十分想定される」などです。SF的な研究が進みつつあることに驚かされます。大学や研究者をこうした軍事研究へ動員するために、岸田政権は日本学術会議に介入し、医学を含む科学技術研究者に対して「適正評価」(経済安全保障推進法)を始める方針です。
 IT技術や生命科学の進歩、人生百年時代など劇的に変化する今を生きる私たちには、未来の世代に対する責任が鋭く問われています。日本の医学界には十五年戦争時期に731部隊やハンセン病療養所で非人道的な人体実験を行い戦争に協力した加害の歴史があります。私たち医療人はこうした歴史を踏まえなければならないと考えます。それこそが被害に倒れた人たちに対する責務であり、軍国主義とたたかった先人の歩みに対する敬意ではないでしょうか。
 軍事大国化は社会保障を犠牲にして進みます。岸田内閣は防衛費捻出のために国立病院機構や地域医療機能推進機構(JCHO)が積立てた1500億円を強制的に返納させようとしています。防衛費による医療への圧迫は始まっています。社会保障をめぐる闘いは人間の安全保障をめざす運動であり、平和のための運動です。京都保健会は岸田内閣の軍事大国化政策に反対します。
 今年は京都保健会が未来に向けて転換を一層進める一年です。中期計画で掲げたIT化推進戦略として電子カルテの更新を進め、第八次地域医療計画に向けて検討が進んでいる、在宅診療拠点、同連携拠点など地域医療、地域包括ケア強化に積極的に対応していきたいと思います。各事業所の脱皮と転換が求められるところです。
 気候変動は途上国の人々と将来世代により大きく被害をもたらします。平和運動、反貧困運動などと共に人権問題として取り組むべき課題です。京都保健会SDGs宣言の5項目の取り組み、とりわけエコアクション21を進めます。脱炭素を口実にした原発回帰政策はSDGsと相いれずクリーンなエネルギーをめざす世界の流れに逆行するものです。
 軍事費の増大によって、医療や介護などの社会保障が最も深刻な影響を受けることになります。私たち京都保健会の経営は強い逆風にさらされます。全職員の経営の力でこれに抗していかなくてはなりません。収益を伸ばし、今年から始まる借入金の返済資金を安定的に確保できる経営構造をめざします。
 中期計画のキーワードはオープンマインドな変革です。医療の変革や政治と社会の変革は保健会自身の自己変革と一体のものです。新型コロナ感染との闘いで寄せられた声に応えていくために、思い込みや決めつけのないマインドが大切です。自らも変わりながら開かれた関係を作って行くこと、これが当会の発展していく原動力になります。地道な継続こそが、地域に美しい花を咲かせ豊かな恵みを育んでくれると確信します。今年も一年、よろしくお願いいたします。
2023年1月4日