帯状疱疹 原因はウィルス

いつでも元気 2021.12 No.361より転載
福岡・健和会大手町病院 皮膚科 山本淳子

 帯状疱疹について、読者のみなさんはどのようなことをご存じですか。
 皮膚科の外来では、患者さんから「帯状疱疹は水疱瘡と同じって本当ですか」「痛い病気ですよね」と聞かれることがあります。「ぶつぶつがぐるっと一回りすると、死んでしまうのですよね」などと言う人もいます。

症状と原因

 帯状疱疹の発症率は50代から高くなり、80歳までに約3人に1人がかかると言われています。
 症状としては身体の左右どちらかにピリピリした痛みと、水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に出現します。かなり痛くなる病気だと思っている方も多いのですが、症状には個人差があります。
 水疱が少ししかないのにものすごく痛くなる人もいれば、水疱がたくさん出ているのに全く痛みがない人もいます。皮膚の違和感やしびれから、ズキズキと針で刺されたような痛みまでさまざまです。
 帯状疱疹の原因は「帯状疱疹ウイルス」です。実はこのウイルスは、水疱瘡と同じものです。
 子どもの頃に水疱瘡にかかったことはありますか。水疱瘡にかかると、水疱瘡の免疫ができます。水疱瘡は治ったように見えても、ウイルスが消えているのではなく、身体の神経節に住み着いています。
 普段は免疫によってウイルスの働きが抑えられていますが、何らかの原因で免疫が下がるとウイルスが活性化します。ウイルスは神経節から神経の流れに沿って皮膚に出てくるので、身体の片側に帯状に症状が出現することが多いのです。
 冒頭に述べた言い伝えのように「発疹が身体を一周する」ということはたまにありますが、現在は治療薬も開発されているので命に関わることはありません。まれにウイルス性髄膜炎・脳炎という重篤な状態になることがあります。合併症や後遺症を発症することもあり、早めの受診をお勧めします。
 資料1は帯状疱疹が発症する部位とその割合です。頭部や顔面に発症すると、目や耳の感覚器を傷つけることがあり、特に注意が必要です。

治療は内服薬で

 治療は抗ウイルス薬と痛み止めを内服します。「入院して点滴をすれば早く治る」というのは昔の話。今は内服薬でもかなりの効果を期待できます。
 2000年代に抗ウイルス薬「バルトレックス」が出たときは画期的でした。効果の高い薬ですが、副作用があります。腹痛や嘔吐のほか、まれに目眩や意識消失などを起こすことがあり、高齢者や腎機能異常のある患者さんに処方する際には注意が必要です。
 数年前には「アメナリーフ」という抗ウイルス薬が出ました。1日1回内服するだけで良く、重い副作用はまずありません。
 ただ、アメナリーフは1日分の原価が約3000円と高額なのが欠点です。保険が3割負担の人は、7日分で約6300円を薬局で支払わなければいけません。これはバルトレックスのジェネリック薬の約3倍もかかります。
 私が勤務する病院の働き者の職員さんたちは、若くして帯状疱疹を発症します。私は職員さんに「1日1回内服する値段の高い薬にしますか。値段は安いものの、嘔吐や目眩があるかもしれない1日3回内服する薬にしますか」とたずねます。

痛みの持続に注意

 帯状疱疹による発疹が治ったあとも、痛みが長期間にわたって持続することがあります(帯状疱疹後神経痛)。ウイルスによって神経が傷ついた結果と考えられますが、その場合は服薬などで痛みをコントロールします。併せて、心理療法や理学療法を検討することもあります。
 また帯状疱疹による神経痛が治まったあとに、「気温が急に下がる」「台風が近づいて気圧が下がる」「かなり疲れた」という条件で、同じ部位が痛むことがあります。
 これは神経痛の症状が出ただけで、帯状疱疹の再発ではありません。帯状疱疹にかかってウイルスに対する免疫をつけ直せば、ほとんどの人に再発は起こりません。

予防とワクチン

 帯状疱疹は免疫力の低下が主な原因です。「試合が近いので、炎天下で一生懸命サッカーの練習をした」「繁忙期で1カ月間、休みがほとんどとれなかった」などの肉体的な疲労で免疫が下がることがあります。無理が重なると、若い人でも発症します。また、「ペットが亡くなった」などの精神的な落ち込みでも免疫が下がります。
 予防のためには、可能な限り免疫が下がらないように努めることです。日頃から十分な休息をとり、疲労やストレスを避けて、バランスのよい食事を心がけましょう。
 「(免疫が下がるような)心当たりがありません」という方にはがんの検査を勧めます。帯状疱疹の背景に、何らかの病気が隠れているかもしれません。「がん検診を受けたことがない」という方がいれば「この機会に検査を受けましょう」と促します。
 50歳以上の人は、帯状疱疹ワクチンを打つことができます。任意接種(自費)ですが、ワクチンで免疫を強化して帯状疱疹の発症を防げます。資料2をご参照ください。

コロナ禍の影響

 コロナ禍の中で、帯状疱疹の患者さんが増えているようです。自粛生活によるストレスや不安、運動不足などが背景にあると考えられます。
 また、コロナワクチンを接種して約1~2週間後に帯状疱疹が出る患者さんもいます。詳しいことは分かっていませんが、免疫が下がれば、それだけ帯状疱疹を発症する確率が高くなります。
 これからも、免疫が下がらないように過ごしましょう。職場の同僚がコロナ感染症で欠勤になったとか、親の介護とかナンダカンダでやることが増えることがあります。働き盛りの人がゆるく生きることは難しいです。休めるときは休みましょう。
 コロナに負けるな。フレフレ!

いつでも元気 2021.12 No.361より転載
福岡・健和会大手町病院 皮膚科 山本淳子