自宅から最後のお花見
長年訪問看護で関わった利用者さんが、インフルエンザにかかったことをきっかけに脳梗塞を発症されました。経口摂取が困難となり、入院中に経鼻栄養を試みましたが誤嚥性肺炎を起こし、回復が難しく入院生活が長引きました。
今後のことを相談し、「本人は家が好きだった」というご家族の意向で、最期を自宅で過ごされることになりました。
毎日の訪問看護、皮下点滴や排泄ケアで、ターミナル期でも症状は安定していました。ちょうど桜の季節で「何か楽しみを見つけたい」と、担当看護師が近所の神社での花見を提案したところ、本人も行きたいというお気持ちでした。娘さん、お孫さん、訪問看護師、デイサービス、ケアマネジャー、上京診療所、福祉用具の業者さんなど、関わっている方々に協力をお願いしました。
穏やかな春の日の当日は、負担のない移動距離にするため、神社の裏門から入れるよう地域の協力もいただきました。子供の頃の遊び場だった神社の桜は満開で、ご家族とともに穏やかな時間を過ごされました。それから約三週間後、息子さんが見守る中、ご自宅で永眠されました。
私たちは、利用者・ご家族の思いや希望をお聞きし、最期までその人らしく過ごしてもらことを大切にしています。そのためにも、普段の生活の中でよりよい時間を過ごしていただけるよう、今後も努力していきます。
総合ケアステーションわかば 所長 田辺順子