シリーズ“こどもにとっていいこと”連載開始
お粥は身体に良いのか?-下痢と食事-
こどもにとって いいこと?その1 印刷用PDFはこちら
日本では、病気の時に、消化に良いものとして「おかゆ」が好まれてきました。それは今でも面々と続いていますが、おかゆは本当に体に良いのでしょうか?
冬に多い嘔吐下痢症(ノロ・ロタ・サポウイルス)では、世界中の米食の国で日本のような柔らかいものがこどもに与えられてきました。ところが、世界保健機構(WHO)は、嘔吐下痢症の時に「嘔吐が止まったら、下痢にかまわず速やかにいつもの食事に戻せ!」と各国に指示しています。
昔から日本では、胃腸炎の治療では「お腹を休ませる」という考えが良いとされてきましたが、逆に「お腹を休ませる=胃腸がやせる」ということが分かってきました。3回食事を抜くと胃腸の重さは減少を始め、3日間食事をしないと胃腸の働き(重さ)は75%まで低下します。つまりお腹を休ませると栄養状態が悪くなり、真っ先に胃腸がやせてどんどん機能低下していきます。そして、さらに栄養状態が悪化していきます。
実は、胃腸は身体のうちで一番頑丈に作られていて、どんなにひどい下痢のときでも、腸からブドウ糖(これがエネルギー源です)の吸収は少しも落ちません。つまり、いつもと同じ栄養価の高いものを食べていれば、やがて下痢は治るのです。実際、おかゆばかり食べていると元気が出ないし、こってりしたものが食べたくなりませんか?これは、栄養状態が悪くなっているため体が栄養状態の改善を要求しているからです。それなのに、おかゆを食べ続けるなんてまるで修行僧の「難行苦行」のようです。そんなことをしても、胃腸は元気になりませんし、悪くなるだけです。
こどものエネルギー = 糖分補給が重要‼︎ 下痢の時も、いつもと同じ食事をして元気を出すことが良い治療法です。
でも、ここまで話しても、こどものころから「耳にたこ」のおかゆから離れることは難しいです。「でも先生!やはり脂っこいものと冷たいものは止めた方が良いですよね」と保護者さんはおっしゃいます。ところが、アメリカでは脂肪は腸の動きを遅くするという理由で、こどもの下痢では最初にチキンスープを与えるのが常識です。ということは牛乳も良いということになります。
そもそも、みかんは下痢をさせ、りんごは良いという言い伝えは間違いで、リンゴは便を軟らかくさせる食べ物です。冷たいものは下痢させるというのは本当でしょうか?繊維の多いものは下痢を悪化させるというのは本当でしょうか?
おかゆで食欲をなくさせその結果胃腸をやせさせて、そして早く良くなれなんて、なんと馬鹿げたことなのでしょう。病気を治すのは病人本人です。 その本人の元気が出ない食事を与えることが本当に治療と言えるのでしょうか?